美忘録

羅列です

金と服

「世の中金」という言葉がこうも人口に膾炙しているということは、つまり多くの人間が少なからず金の必要性を実感したことの証左である。かくいう私もその一人であり、暇さえあれば金をよこせと高円寺の空に嘆願する始末である。

 

私は生粋の守銭奴だ。友人の買ってきた菓子類は食い散らかしても自分で買ってきたものは決して渡さないし、大学のWi-Fiでアニメを見たいし、全ての成城石井を破壊して西友を建てたい。そういう人間である。

 

そんな私が、遂に、遂に、衣服に手を出した。

 

私はこれまで自分の服装について数えきれないほどの罵詈雑言を浴びせられてきた。何を着ようがキモい死ね以外の評価を得られず終ぞ服装に関する自己肯定感は地の底に沈みクローゼットはユニクロしまむらで溢れた。

 

そうするうちに月日は飛ぶように過ぎてゆき、私の大学生活が幕を開けてしまった。

 

つまり、制服に身をやつすことで衣服のセンスのなさを韜晦する大義名分を失ってしまったのだ。制服という鎧を奪われた私はまさに俎上の魚、まな板の上の鯛、絶体絶命で孤立無援の四面楚歌状態である。

 

そのうえ私の進学先は慶應・立教・青山と並びオシャレ大学としてそのブランドを遺憾なく発揮する上智大学様である。上下3000円にも満たないしまむらファッションで登校しようものなら女子御三家卒のお嬢様のハイヒールが私の眼窩を容赦なく貫くだろう。ご褒美じゃん。

 

そういうわけで私は大学側に殺されないためにも遂に衣服の購入を決意したわけである。

 

とはいえ一口に「服」といってもその選択肢は遊戯王のカードプールくらい広大である。一歩間違えようものならまたスクールカースト最底辺を彷徨う憂き目に遭ってしまう。

 

そこで私は後輩の女子高生に判断を仰ぎ、この世界にはwegoというブランドが存在することを初めて知った。女子高生すごい。女子高生はみなこうも衣服のブランドに精通しているのだろうか。「お前が知らなすぎるだけ」だと?なんだ貴様、殺すぞ。

 

炎天下の山手線を新宿から数駅、「そこ」はその日も人でごった返していた。狭すぎるホームに見合わない人の量、アバンギャルドな髪形の通行人、そう、ここは原宿駅、若者の聖地。

 

人波に押し流されながらもなんとかwegoにたどり着いた私は件の女子高生におすすめされた商品をポンポンとカゴにブチ込みそのままレジへ直行。8000円取られた。高いね服って。金が欲しいよ。

 

その後は適当に表参道をブラブラ歩き回いてブルジョアジーと私の生活水準の違いをまざまざと見せつけられて精神が摩耗したり竹下通りを散策してパフェを食らう女は全員死んだほうがいいと怒りに打ち震えたりと紆余曲折ありながらも何とか高円寺に舞い戻ってきた。

 

高円寺でも服を買った。8000円取られた。バカかな?

 

そうして16000円の尊い犠牲を払うことで私は大学で生きる権利を貰った。これで私も夏を乗り切れるだろう。そう思い買ってきた衣服を身に纏った写真をSNSにアップしたところ一瞬にして怒涛の罵詈雑言リプが多数飛来した。

 

私の夏は今年も始まる間に終わりそうである。誰か助けてくれ。