美忘録

羅列です

合宿

大学入学から早数か月、遂に大学の夏休みがやってきた。そう、全ての苦役から解放され己が欲望のままに酒池肉林の限りを尽くせる、人生で最も自由な日々が始まりを告げたのである。

 

だがしかし我々に与えられているのはあくまで「時間」のみである。真に有意義な夏休みを謳歌したいのなら、友人を増やす、バイトで稼ぐ、免許を取るなどといった主体的行動によって空白のカレンダーにせっせと赤丸を付けていく必要がある。結局大学の夏休みを価値あるものとして礼賛しているのはカレンダーが予定で埋まっている側の人間たちなのである。噫無情。

 

さて、私はといえば、カレンダーが埋まっていない側の人間の例に漏れず、毎日エアコンの効いた部屋で惰眠とフライドポテトLを貪り続けてはかけがえのない時間を無為の闇へとかなぐり捨てていた。dアニメの視聴履歴のみが虚しく積み重なり、カーテンの隙間から差し込む朝日は部屋に舞うホコリと混ざり合い一筋の光芒を作りだしていた。

 

そんな生活に辟易しながらも私は数日後に迫るあるイベントに一縷の望みを託していた。

 

そう、部活の合宿である。

 

オメッ、合宿っつたらお前よぉ、性が性を呼ぶ性欲の大祭典、日本酒をローション代わりに畳の上で朝まで盛り合う獣性解放イベントじゃねぇかよぉ、ヒッヒヒヒッ・・・

 

仄暗い部屋の隅で三角座りをしながら、その日が来るのを今か今かと待ち望んでいた。

 

さて当日がやってきた。行き先は長野に次ぐ陸の孤島ことグンマ―。こういう文明性から隔絶された未開地で叡智を養う合宿を敢行するの、貧民ひしめくスラム街をフェラーリで爆走するみたいな趣があってメッチャいいな。

 

宿泊先の旅館に着くと、いかにも旅館営んでますよみたいな風貌の老夫婦が我々の来訪を歓迎してくれた。

 

内部構造もまさに古き良き日本といった感じになっており、長野の実家に帰省したかのような錯覚さえ感じた。しかし天井の低さにだけはどうしても苦言を呈さねばならない。合宿の3日間だけで15回くらい引き戸の上部分のガーッってなる部分に頭をぶつけた。痛い。

 

1日目の夜はとにかく書いて書いて書きまくり、文章力を上げる特訓に全精神を集中させた。他には特に何もしていない。深夜3時半に大学群の名称で山手線ゲームをやったくらい。

 

あと、部活の女の子たちと顔合わせするのは今日が初だったんだけど、みんなメッチャ可愛くてビビった。こ、これが上智権益か・・・声優に例えると

 

さぁ2日目は遊んじゃうよ!

 

我々が向かったのは群馬の山中を穏やかに、静かに、しかし荘厳に流るる大河川、利根川。見よ!水面は青く輝いている!

 

正直川にはいい思い出がない。小学校時代には近所の友達と土手の石の防波堤を破壊してたら知らんオッサンに怒鳴られたし、中学校時代には岩場から川に飛び込んだら危うく溺れかけたし、高校時代には近所の川の画像をTwitterにアップしたら東京住みのフォロワーに「ここ人住めるのかよwwwwww」と煽られた。

 

だがしかし今の私は華の大学生。そんな苦い思い出と決別し、そろそろここらで川を受け入れるべきなのである。

 

去年の夏休みぶりに足を浸した川は、冷たかったが、しかし暖かかった。過去の確執を全てなかったことにしたくなるくらい、暖かかった。

 

そうか、本当は分かり合えるんだな・・・俺たち・・・

そんな感慨に浸りながら水面をパシャパシャと弾いたり石をひっぺがえして川底に佇む生命を観察したりした。

しばらくすると川遊びにも飽きてきたので石を対岸に投げる遊びをしていたらうっかり足を滑らせくるぶしを打撲した。クッソ痛かった。

もう二度と来ねーよこんな川!死ね!

 

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ちなみにこれは川とは全く関係の無い群馬のコンビニの画像です。

 

あまりにもくるぶしが痛すぎてその後何のイベントがあったのかほとんど記憶していない。肉を食った記憶と同室の友人が全員寝てしまったので仕方なく温泉前のマッサージチェアに3時間ほど居座って筋肉痛になった記憶しかない。

 

3日目は連日の徹夜が祟って元気半減、抜け殻のような状態でなんとか編集会議を乗り切り、無事全ての日程を片づけた。

 

高速バスで新宿に戻ると、纏わりつくような熱気と都会の喧騒がぶわっと一挙に押し寄せ、私の日常は再び回り始めた。やはり私にはこっちの空気の方が本性的に合っている気がする。や、田舎コンプとかじゃねぇーから!

 

帰りの丸ノ内線の中、足元のキャリーバッグに目を落としていると、不意に合宿中の様々な思い出が去来した。ああ、なんだかんだで楽しかったな・・・

 

3日ぶりに戻ってきた自室は相変わらず空き巣にやられた後のように汚かった。飲みかけのペットボトルが何とも形容しがたい色に変色していた。

 

急に全てがどうでもよくなり、私はそのまま深い眠りに落ちた。

 

意識が途切れる直前、そういえばお土産を買ってないことを思い出したが、それと同時にお土産を私ほど親密な相手がいないことも思い出した。鬱。